大きな二点目の質問になります。公立中学校の教育についてです。
麹町中学校の7月の学校説明会で、校長先生より、教育方針の転換を検討しているという説明があったことを、8月3日の朝日新聞の報道で知りました。
その時点では、在校生の保護者や子供たちに説明がなかったため、不安な声も聞きました。その後、PTA主催で、一部の保護者には校長先生自ら説明があったとのことですが、現在の検討状況、また保護者や子どもたちへの説明会等の予定について教えてください。
校長先生が変わることで、教育方針が変わることは、これまでにもあったことです。しかし、麹町中学校は特色のある教育の実践校として、区内はもちろん全国的に関心を集めている学校です。2014年より始まった改革の流れを変えるのであれば、改めてどのような経緯で改革が行われ、その結果、どのような効果があったのか振り返りと検証が必要と考えています。
冒頭で述べましたように、これまでの時代と今の時代に求められていることは違います。与えられた問題の答えを解けることよりも、自ら何が問題なのかを考え、試行錯誤することや、多様な価値観を認め合い、対話をできる人材が求められています。
こちらは、2014年から改革を行った麹町中学校の教育方針について、工藤勇一元校長先生の講演や著書からまとめたものです。
教育の目的を、社会の中でより良く生きていけるようにすること、みんなにとって生きやすい社会をつくれるようにすることとして、
目指す学校像は、一人ひとりが、可能な限り自由に生きられ、多様性を認める、誰一人置き去りにしない学校としました。
そのために身に着けることが、自ら考え、判断し、行動する「自律」と、多数決ではなく話し合いにより、利害関係を調整してみんなにとって良い学校にする「尊重(対話の力)」、そして豊かな発想で、新たな価値を生み出す「創造」の三つです。
学習指導要領や、よく注目される、宿題・定期テストの廃止、全員担任制などは、あくまでもそれらを実現するための手段になります。
手段ではありますが、ここでは、各施策がどのような背景があって導入されたのか、またどのような効果を想定していたのか、振り返ってみたいと思います。
まず、宿題・定期テストの廃止についてです。宿題や定期テストをやめて単元テストのみにした背景として、一時点での評価に意味がなく、学力の定着や、最終的に理解することこそが大事である、という考えがありました。どの科目も最低一回の再テストを実施し、評価は最新に受けたテストの点数となっています。そのため、再テストを受けて点数が下がるリスクもあり、生徒たちが自分で受けるかどうかを決めています。
一年生の保護者の中には、宿題や定期テストがないと勉強しないのではと心配する方もいるそうですが、三年生になると自分で勉強するようになり、宿題もない分、受験勉強に時間を充てられるとのことです。自分でわからなかいことに着目して学ぶという、勉強の姿勢が身につくことが、一番の想定される効果です。
次に、クラス固定の担任制から、学年全員で持ち回りの全員担任制にしたことについてですが、導入理由の一つに、学級崩壊があったそうです。固定担任制の場合、クラス間での比較・競争が行われることがあり、生徒も保護者も「あの先生がよかった」「うちのクラスはハズレだ」と言って不満を募らせ、学級崩壊に繋がることがあったそうです。
全員担任制にすると、先生同士が役割分担をし、迅速にトラブル対応ができたり、気になる子どもをチームで協力してフォローできるようになり、子ども達が安定すると同時に、先生たちの負担も軽くなったと言われています。
やはり一年生の保護者などからは、誰に相談してよいかわからないという声があったようですが、自分で声をかけられるようになることも、成長につながりますし、徐々に子どもから、話したい先生を自分で選んで相談できるようになるとのことです。
最後に頭髪・服装指導の撤廃についてです。こちらは、保護者側から制服変更の提案があり、3年かけて検討した結果、標準服を定めつつ、基本は私服で自由になりました。PTA制服等検討委員会で保護者や子どもと一緒に検討していました。
検討する中で、夏と冬に実験をしているのですが、夏は私服の方が、冬は制服の方が経済的で楽だという発見があったそうです。詰えりが苦しいという声や、アレルギー、宗教にも配慮した標準服を決めたと言われています。この一連の活動により、多数決ではなく、話し合いを通じて「みんながOKのもの」を決めるというプロセスも学ぶことができました。
以上、整理して振り返ってみましたが、区および教育委員会として、2014年からの麹町中学校の改革の成果について、どのように見ているのか、お考えを伺います。
また、改革にあたっては、時間をかけて、保護者や子ども達を巻き込んで一緒に検討してきたと聞いております。先ほどお話した通り、制服協議会では保護者と子ども達が一緒になって検討してきましたし、学校運営協議会では生徒会の子ども達、保護者、卒業生などを入れて、当事者意識を持った人たちに運営してもらっていたと聞きます。
今回の制服に関する検討については、保護者や子どもたちもメンバーに入っているのでしょうか。制服協議会のメンバーや現状の活動内容、今後の開催予定はどうなっているのか、また学校運営協議会のメンバーや教育方針の変更に関する協議状況はどうなっているのか、お答えください。
10月は、小学校6年生の子ども達・保護者が学校選択をする時期です。
公立中学校二校と九段中等教育学校の「教育目的」「目指す学校像」「身につけること」など、特徴がわかるようにお答えください。
最後になりますが、教育長には、当質問およびパワーポイント資料について、ぜひ教育委員会にて共有頂けますよう、お願い申し上げます。
<答弁>
教育担当部長/はまもり議員の公立中学校の教育についての御質問にお答えいたします。
まず、麹町中での現在の検討状況についてですが、地域から選ばれる学校への転換に向け、
ICT教育環境のフル活用、教育相談機能の強化、特別支援教育の充実、授業研究の推進、
次世代リーダーの育成などを柱とした取組を進めております。
令和3年度から実施の新学習指導要領の目指す新たな学力観や新たな高等学校入試への対
応など、様々な課題を検討しているところであり、今後、全校集会や保護者会などで適宜
適切に説明や情報提供が行われていくものと認識しております。
次に、2014年からの成果についてですが、テストや担任制などは、議員御指摘のとお
り、「教育目標」実現のための手段です。
また、成果については、議員御指摘のような、手段としての効果もあったでしょうが、例
えば単元テストについては、学力の二極化や1回で実力を発揮する力の低下、集中力が持
続しないなど、様々に課題もあると認識しております。
次に、制服検討委員会については、当時の標準服を「機能性、経済性」に重点を置いた大
幅な変更を行うために立ち上げられた保護者によるチームであり、現在そうした組織はあ
りません。
また、学校運営協議会については、様々な課題や改善の方向性を共有しつつ、標準服の運
用などについては、校長に一任されております。
次に、各校の特徴についてですが、教育目標について例示するならば、麹町中学校は「自
律・尊重・創造」を掲げ、自律的な活動、対話的解決や他者を尊重する力を身につけるた
めの授業や学校行事を実施しています。
神田一橋中学校は「向学・礼節・貢献」を掲げ、自ら学びに向かい確かな学力を定着する
ために、ICT授業に積極的に取り組み、伝統文化を取り入れた部活動を行っております。
九段中等教育学校では「豊かな心、知の創造、未来貢献」を掲げ、未来志向の世界のリー
ダーの育成に力を入れ、STEAM教育を取り入れた探究的な学習に重点を置いておりま
す。
教育委員会といたしましては、生徒たちが各学校の教育目標に向かって成長できるよう、
また、小学生が自分に合った学校選択ができるよう、引き続き支援してまいります。
<再質問>
麹町中学校の改革、教育変更については適時適切に公表していくということだったのですけれども、既に、今説明が足りないというような声が上がっています。
今まさに、生徒も保護者の皆さんも、きちんと全体像を説明してほしいというふうに思っ
ておりますので、こちらは一刻も早く御説明いただきたいと思います。
<再答弁> 教育担当部長/はまもり議員の再質問にお答えいたします。
先ほど御答弁いたしましたとおり、様々な課題を今、検討中でございます。
その検討の状況に応じて、今後適宜適切に説明や情報提供をしてまいります。
以上
Commentaires