http://www.kensakusystem.jp/chiyoda-vod/video/R05/R050921-6.html 大きな3点目の質問、住民参加・民意の確認に移ります。
民意を確認する手法の一つに、「無作為抽出による、討論型世論調査」というものがあります。元々はスタンフォード大学 J. Fishkin 教授が考案した手法で、くじ引き民主主義と呼ばれることもあります。
このしくみについて、簡単に説明しますと、まず、住民基本台帳を元に無作為で住民を選びます。次に、選んだ住民宛てに討論会への参加「案内」を郵送し、参加意思を確認します。そして、参加意向のある人達に集まってもらい、グループごとに討論をしてもらうというものです。
この無作為抽出による討論型世論調査・くじ引き民主主義において大事なポイントは、二つあります。専門家等による情報のインプットとファシリテーターの存在です。
例えば、東海村で原発に関する討論を行った際は、参加者は、専門的な知識がないため、日本原子力発電株式会社の方や大学教授など、原発を推進する側・反対する側、両者の話を聞いています。発電所や福島第一原発を見学する機会も設けています。
またファシリテーターを介することで、ルールに基づいた建設的な討論が可能となりました。
この二つのポイントを抑えることで、原発という難しいテーマについても、「自分たちにできることは何か、自分たちはどうしたいのか」について議論を進め、「自分の問題」として関心を高めることができたそうです。
ちなみに、当事例では、原子力発電所の是非について話し合うことを目的としたものではなく、自分ごと化することを目的としたそうです。
ここで、アンケートやタウンミーティングなど、他の手法との比較を見てみたいと思います。
アンケート等の通常の世論調査では、回答者は必ずしも十分な情報を持ってい
るわけではないため,世論調査の結果を良質の民意とみなすことは難しいことがあります。
一方,タウンミーティングなどの場で討議を行えば,意見の質は高まるかもしれませんが、そのような場に集まる参加者の属性に偏りが生じることが多いため,意見の代表性が問題になります。
討議の質を高め、同時に代表性を担保する手法が、無作為抽出による討論型世論調査と言えます。従来型の公募や、行政が指名するやり方では参加しなかったような人、政治と縁の少なかった人など幅広い層の参加が期待できます。
これにより、多様な意見が集まり、区はもちろんですが、住民同士の気づきも生まれやすいと言われています。
ここで質問です。千代田区においても、第四次基本構想の策定にあたり、無作為抽出による区民討論を実施したとのことですが、どのような背景で導入を決めたのか、またその成果についてお答えください。
色々な課題はあると思いますが、適切に情報をインプットすることと、ファシリテーターを介することで、他の分野でも活用ができると考えます。杉並区では、無作為抽出によって集められた区民が、予算の使い道を提案する「参加型予算」といった取り組みも始まりました。他の分野も含め、「無作為抽出による討論型世論調査」について、今後の活用を検討していますでしょうか。お答えください。
そのほか、住民参加の手法として、インターネット等デジタルツールを活用した取組も出
てきています。
スペインのバルセロナ市では、Decidim(デシディム)という、参加型のプラット
フォームを運用しています。
まちづくりの分野で市民参加を促すための仕組みで、オンライン上で市民に意見を書き込
んでもらったり、対話や議論をしてもらい、施策に反映しようというものです。
まだ実験的な段階ではありますが、2016年から2019年にかけて行われた第1段階
では、約4万人の市民が参加して、約1500の施策に落とし込まれました。
また、2020年からの第2期の取組では、参加型予算をつくり、市の予算のうち3から
5%に当たる使い方を、市民の意見を基に決めたそうです。
例えばある市民が、屋上に庭園を造って町の緑地を増やそうという提案をしたところ、様々
な人からの支持を受けてプロジェクトが実現し、最終的には、10団体が屋上庭園を造る
ことになったそうです。
このプラットフォームは、世界各地で300以上の公的機関や団体に使われており、日本
でも、兵庫県加古川市や渋谷区などで取組が始まっています。
渋谷区の参加者からは、昼間に実施する通常のワークショップと違って、時間に縛られず
に参加できたといった意見や、通常のまちづくりの会合は敷居が高く発言しづらいが、こ
こでは気軽に発言できるといった声があったそうです。
DXに力を入れている千代田区ですが、インターネット等のデジタルを活用した住民参加
手法について検討していることはありますでしょうか、お答えください。
以上となります。区長及び教育長、関係理事者の前向きな答弁を求めまして、質問を終わらせていただきます。 <答弁> 政策経営部長/はまもり議員の住民参加等に関する御質問にお答えいたします。
初めに、基本構想の策定に当たり、無作為抽出による懇談会を実施した背景ですが、基本
構想の性質上、居住地域や年齢などを実際の区民の構成に合わせたいという事情がござい
ました。
成果の面では、無作為抽出のため、普段区政に関わりの少ない方々が区政に関わるきっか
けとなったことなどが挙げられます。
次に、他の分野における活用についてですが、議論に当たって一定の知識や専門性が求め
られる場合は、テーマを示して公募するなどの方法が有効な場合もあります。会議の目的や性質によって選任手法を選択することで、より実りのある議論が期待できると考えております。
次に、インターネット等のデジタル技術を活用した住民参加の手法についてですが、時間
や場所を選ばず、気軽に区政に参画する手段を確保する観点から、デジタル技術の活用は
大変有効であり、本区においても、道路の維持管理に活用する道路通報システムの導入事
例がございます。
インターネットの活用に当たっては、本人確認や改ざん防止などのセキュリティ対策、誹
謗中傷や不適切な発言など利用上のマナーの問題等、環境整備も必要でございます。
適切な活用方法等について、引き続き研究をしてまいります。 以上
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